完璧なカノジョの秘密
「………秋野、行くぞ」
「えっ、でもっ………」
美樹さんの手をとり、歩き出そうとする清人に、美樹さんは私を振り返る。
「ここじゃあ、まともに話も出来ねぇ」
「は、はい……」
困惑したような美樹さんの顔。
それも、演技だと思ったら、すごく腹立たしくて、それを信じる清人に、絶望した。
「なんかごめんなさい、我妻先輩……」
「謝るのはこっちだ、悪かったな」
美樹さんの手を引いて遠ざかる清人の背中を、私は
呆然と見送る。
「ふっ……どうして……どうしてっ……清人……」
ーポタッ、ポタッ
涙が、ついに溢れて、地面に染みを作ってはすぐに消える。
跡が残らないから、きっと誰も、私の悲しみに気づかない。
気づいてほしい人が、ここにはいない。
「まりあ先輩………」
すると、一部始終を隠れて見ていたのか、有谷君が遠慮ぎみに声をかけてきた。
「カッコ悪いとこ見せたわ……ごめん、今は一人にしてくれる?」
私は、有谷君に背中を向けたまま、なるべく平然を装うように、そう声をかけた。