完璧なカノジョの秘密



有谷君に連れてかれるまま、私はまた体育館裏に来た。

そこの階段の段差に、有谷君は腰かける。

私もそれに合わせて座った。


「まりあ先輩、急にすみません」
 

有谷君は困ったように笑う。

私の手は、離さないまま……。


「あの、手………ごめん、離して」


清人に、誤解されたくない…。

まぁ、こんなところに来るはずは無いけど。


「待って………まりあ先輩、聞いてほしいことがあるんです」


有谷君は、私の手を掴んだまま、私に顔を近づける。

それに、私は目を見張ってのけ反った。


「あり……」

「まりあ先輩の苦しむ顔、俺……もう見たくありません!」


まっすぐに私を見つめる有谷君に、私はとっさに視線を外した。

自分の心が弱っているからか、有谷君の言葉は私を惑わせる。


「我妻先輩、今日もまた、美樹に会ってますよね?どうして、何も言わないんですか!」


「それは………」


何を言えばいいのか、分からないからだよ…。


清人を前にして、ただ傍にいてほしいって言葉しか浮かばなくて、どうやってもワガママな私になってしまうから。


「好きだから……清人に私の気持ちを伝えるのが怖いんだ……」

「憎い、じゃなくて怖い……?」


有谷君は、不思議そうな顔をする。

それに、私は自嘲的に笑った。










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