氷上のプリンセスは
#1 嵐の予兆
ショートボブに切りそろえられた黒髪の隙間から時折覗く耳には大量のピアス。
太めの黒縁メガネの奥には色素の薄い緑色の瞳。
肌は青白く、唇は不釣り合いにもほんのりとした桜色をしている。
そんな彼女が天才少女と呼ばれていたなんて誰も思わないだろう。
まぁ本人自信、そう思われないことを望んでいるのだからそのほうがいいのかもしれない。
「………相変わらずすげーよな。あのピアスの量。」
「けどあの見た目でサボり魔のビッチでも毎回テストで1位取ってんだもん。先生たちも文句いえねーんだろ。」
ヒソヒソと話してるけど、全部聞こえてる。『サボり魔』ってのは認めるけど、ビッチってのは気に食わない。
彼女________伊藤ユリは少しムッとして、授業をサボるべく屋上へと向かった。