恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
声と共に雪野先輩の手が、手の中のDVDを奪った。

それから一際低い声を出しながら、先輩が旬を見据える。

「……片瀬。瀬里を利用して自分の欲求を満たして、お前は満足なのか。こいつと共に過ごしてきた日々を思い出しても、お前はこいつの心を踏みにじれるのか」

旬がグッと言葉に詰まった。

重苦しい沈黙が、私達を絡めとるようにまとわりつく。

旬は伏せた眼を上げようとはせず、紀野君もまたうつむいた。

「……雪野先輩、帰ろう」

震える声をどうすることも出来なかったけど、私は必死に喉を押し広げた。

もう、今すぐに立ち去りたかった。

惨めで仕方なかったから。

何年も何年も大好きだった旬にとって、私は欲求を満たす道具にすぎなかったのだ。

その時、カシャン!と軽い音がして、小さく旬の驚く声が聞こえた。
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