恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
雪野先輩の投げたDVDが旬の頬をかすめ、玄関ドアに当たって落ちたのだ。

雪野先輩は切れ長の眼にグッと力を込めると旬を見据えた。

「……片瀬。次はないと思え。帰るぞ、瀬里」

「……はい」

雪野先輩は私の手を掴むと、大股で歩き出した。

私の家の庭に着くと、雪野先輩は何もなかったかのように淡々と話した。

「明日の美術教室は、俺が送り迎えしてやるから」

それから、来る時よりも優しく私にメットを被せた。

「しっかり俺に掴まってろ。大丈夫だから」

「……はい」

もう、バイクが怖いとか、そんな感情は湧かなかった。
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