恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
旬が……旬が、あんな事言うなんて。

何年も彼を大好きだったあの時間は、無駄だったんだ。

ギシギシと胸が軋んで痛い。

苦しくて苦しくて、空気が足りないような感覚。

なんて、痛いんだろう。

雪野先輩の家に着いても、私は胸が苦しかった。

「降りろ」

先輩の声が聞こえているのに返事ができない。

そんな私を見て雪野先輩は、小さく息をつくとメットを脱がせてくれた。

それがすごく優しくて。

不覚にも堪えていた涙が、頬を伝った。

それから、低くて静かな先輩の声が耳に届く。
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