恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
しゃくり上げる私を、先輩が困ったように見つめた。

その直後、

「しゃーねぇな」

「っ?!」

グイッと腕を引かれた。

コツンと先輩の胸に額が当たる。

それと同時に、包み込むように先輩が私の身体に腕を回した。

爽やかな香りと先輩の体温を間近に感じて、私は涙が止まった気がした。

せ、んぱい……。

「ほら、泣くな」

髪から先輩の声が響くように耳に届いて、私は胸がキュンと鳴った。

怖いとばかり思っていた先輩が凄く優しくて、私の脳裏には、血だらけのハート型の心臓が瞬く間に癒えていく画が浮かんだ。

先輩はトントンと私の背中を優しく叩き、

「落ち着くまでこうしといてやる」

思わず先輩のシャツをキュッと掴んでしまったけど、先輩はなにも言わなかった。

ただ、あやすように先輩は、私を胸に抱き続けた。
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