恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
途端に耳慣れない声が聞こえる。

「この女が白狼(ハクロウ)の許嫁か?」

「ああ。この女からは白狼の匂いが強く放たれている。まず間違いないだろう」

は?

白狼……?

頭を動かすとズキッと痛みが走った。

な、なに……?私、一体どうしたんだっけ?

眼を閉じたまま、私は記憶を遡り、自分の身に何が起きたのかを確かめようとした。

えーと、確か……美術教室が終わったから雪野先輩に電話をして、そしたら遣いの人に声をかけられて、車に乗り込んだら凄くイイ香りがして眠くなって……。

で、なにこの会話。

『白狼の許嫁』ってなに?

私は自分がどこにいるのか分からず不安だし、加えてこの会話の内容が気になるしで、うっすらと眼を開けて様子を窺った。
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