恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
……ちょっと待って。

もしかして『この女』って、私の事だったりする?!

いや、絶対私の事だ。

だって、男が私に一歩近づいたから。

やだ、冗談でしょ?!

どうしようっ。

激しく心臓が脈打ち、耳元で煩く鳴り響く。

こんなことは初めてで、どうしていいか分からずに私は硬直していたけど、運転手らしき男性に腕を捕まれた途端、反射的に短く叫んだ。

「きゃああっ!」

翠狼が笑った。

「聞いてたのか。なら話は早い。海狼、下がってろ」

その口調はまるで、私が話を聞いていたのを心得ていたかのようだった。

私は危機を感じて、寝かされていたソファから焦って身を起こそうとした。
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