恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「ガウッ!!」

きゃあああっ!

眼にも留まらぬ早さで、雪野先輩が牙を剥き、翠狼に飛びかかった。

翠狼の身体が仰け反り、地に転がる。

大きな音と獣独特の鳴き声が怖くて、私は思わずぎゅっと眼を閉じた。

その直後、ガシャンとガラスの割れる音と共に風が巻き起こった。

それからは嘘のように辺りが静まり返り、私は恐る恐る両手を顔から離して眼を開けた。

……あ、れ……?

眼を開けた時、すでに四頭の姿はなく、代わりにいつもの姿の雪野先輩が眼の前に立っていた。

「せんぱ……」

言葉が途切れた。
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