恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「あの祠の下には、俺達人狼族の隠れ家があるんだ」

隠れ家?!あんな小さな祠の下に?

「あの竹林の敷地内の地下には、人狼族の世界がある。そういう隠れ家が日本全国に何ヵ所かあるんだ」

私が驚いていると、

「多分白狼は、凰狼派に呼び出されたんだろう。凰狼派の奴らは千年前に俺達の仲間になったが、やはりどこかで劣等感や負い目を感じてたんだろう。そんな中、わずか十歳の白狼が天狼神の石に選ばれた時、ついに不満が爆発した」

そんな……。

なにも言えない私の前で、翠狼は続けた。

「分からなくはない」

少数である凰狼派は、肩身の狭い思いをしてきたのかも知れない。

一族の中には先輩よりも遥かに年上で、優れた人も沢山いるのに、その人たちを飛び越える形で天狼神の石が先輩を選んだという事実。

「……もうすぐ着く」

翠狼はそう言ったきり、車を降りるまでもう何も言わなかった。
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