恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
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「下がってろ」

竹林の中の祠に着くなり、翠狼は鋭く言い放つと、祠の前の小さな鳥居の手前で私を振り返った。

「しっかり立って歯を食いしばってろ。今、地下への扉を開ける」

周りは竹だらけだし、眼の前には小さな鳥居とその先の祠しかないのに、どうやって地下になんか……。

当たり前だけど、ここにはそんな扉なんか存在しない。

けれど翠狼が真剣だったから、私は言われた通りに歯を食い縛り、彼に頷いた。

「行くぞ」

「うん」

私の頷きを確認したかと思うと、翠狼は右手を胸の高さに上げて正面へ突き出した。
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