恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
その途端、ゴオッいう風が起こったかと思うと、辺りの竹がユラユラとゆっくり揺れ、鳥居の向こうにある祠がグニャリと歪んだ。

な、なに?!

よく見ると祠が歪んだというより、鳥居と祠の間の空気……というか空間が、渦を巻いていて、まるで水飴のようだった。

「人間にはちょっとキツいかも知れんが、俺の腕に掴まれ」

「……分かった」

この先に先輩がいるなら、この先にいる先輩に会えるなら、私は絶対耐えられる。

私は歯を食い縛ると、翠狼の腕を強く掴んで鳥居をくぐった。

「あああっ!」

全身を針で刺されるような痛みがした。

ほんの一瞬なのに、意識が飛びそうになる。

翠狼がなぜ歯を食いしばれといったのかが、よく理解できた。
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