恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
凰狼が叫んで辺りを見回した。

「……っ!!」

全身が凍り付いた。

だって、ギラリと光った凰狼の眼が、ピタリと私の上で止まり、みるみる彼の口角が上がったんだもの。

「ほう、これはこれは……白狼の匂いがプンプンする人間のお嬢さんがいらっしゃる」

や、ばい……!

「瀬里……!」

掠れた先輩の声がして、すぐに先輩を見たけれど、言い様のない恐怖に襲われ、私は再び凰狼から眼をそらすことが出来なかった。

「これは……真神の賜り物か」

しまったと思った。

脳裏に、いつかの翠狼の言葉が蘇る。


『お前は《満月の儀式》の生け贄にすぎん』


それから、先輩とのこの会話。
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