恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「瀬里を離せ!さもなくば、容赦はしない!」

凰狼に一撃を加えた先輩が、地の底から這い上がるような恐ろしい唸り声を上げた。

それを見た凰狼が、眼の縁から血を流しながらも体勢を立て直し、苛立たしげに瞳を光らせた。

「お前のような青二才が王など……片腹痛いわ!!」

言い放つや否や、凰狼が思いきり首を振り、私を空中に放り投げた。

「きゃあっ!」

フワリと浮き、直後に降下する身体をどうしても制御出来ない。

私は本能的に歯を食い縛った。

ああ、地面に叩きつけられる……!

その時、信じられない痛みが腕に走った。

なに?!

見ると、今までに見たこともないような黒くて太い爪が、私の右腕を貫通していた。
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