恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「きゃあっ!」

歯を食い縛る余裕もなくなった私の身体を、誰かが優しくくわえた。

漆黒の被毛に、真緑の瞳。

「翠……狼……?」

「しっかりしろ」

「翠狼っ!!」

先輩がこちらを見て叫び、翠狼がそれに答えた。

「危害は加えない。瀬里は任せろ」

先輩は一瞬驚いたように眼を見開いたけど、すぐに頷くと、凰狼に向き直った。

辺りに怒号や悲鳴が響き渡る中、先輩は真正面から凰狼を見据えると、鼻にシワを寄せて牙を剥き出した。

そんな先輩の前で、凰狼が不敵にも笑った。

「白狼。今こそ我は挑戦する!」
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