恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「瀬里!」

先輩がチラリと私を見た。

「先輩……やめて」

「瀬里、止めるな」

私の身体を抱き起こしながら、翠狼がそう言った。

「お前は人間だから考えられないかも知れないが、人狼である俺達にとってこれは、王の座をかけた真剣勝負なんだ」

理解できない訳じゃない。

でも、先輩が傷付いていくのが嫌だった。

「先輩……ごめん。ほんとにごめん」

ダメだ、腕が燃えるように熱い。

そんな私を見て、凰狼がニヤリと笑った。

「俺の毒爪にかかれば、一日も持たず死に至る。今のうちに別れを言っておくんだな」
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