恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
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勝敗は見えていた。

凰狼は計算高いが俺ほど強くはない。

厄介なのはあの爪の猛毒。

それを瀬里に……!

翠狼の腕の中で、瀬里の身体が力なく傾いた。

……瀬里……!

よくも、罪もない瀬里を。

王に相応しいのが俺だと分からせてやるだけのつもりだったが……。

殺してやる!

「覚悟しろ。真神の元へ送ってやる!」

俺は凰狼の喉元に食らいついて、とどめを刺そうと大きく口を開けた。

「止めてください!白狼様!!」

すんでのところで、女が凰狼に覆い被さり、その身体を抱き締めながら俺を振り仰いだ。

「どうか、どうか、この人を殺さないで……!!」

桜花(おうか)だった。
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