恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
人狼族は、息の根を止めない限りすぐに傷は塞がり癒える。

だが俺のつける傷は、たとえ人狼であったとしても治りが遅い。

凰狼が僅かに身を起こして俺を見上げた。

「白狼……なぜ止めをささない。俺の爪を奪わなければ瀬里……お前の許嫁は助からないぞ」

俺は、翠狼から瀬里を受け取りながら答えた。

「お前の傷は深すぎる。今、お前から血清を取ると、お前がもとに戻るか分からない」

俺は固く眼を閉じた瀬里を見つめながら続けた。

「桜花の言う通りだ。天狼神の子孫だろうが真神の子孫だろうが俺達は同じ人狼だ。
凰狼。王座は譲れない。
だが俺が正式に王座についた暁には、派閥をなくし真神も天狼神の子孫も差別はしない。俺達は全て平等だ」

息を飲んで俺の話に耳を傾けていた凰狼が、震える声で問いかけた。
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