恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「二度と人間の女に暴力はふるわない」

「…わか…分かった……」

私の返事に頷いた後、翠狼がクッと背を伸ばした。

「白狼が帰った」

私には聞こえないけど、翠狼には先輩の立てた音が聞こえたようだった。

「じゃあ、俺は行く」

「待って!翠狼、先輩とは……」

ここに翠狼がいるっていうことは、仲直りしたって事だよね!?

それが聞きたくて、私はドアノブに手をかけた翠狼を見つめた。

翠狼は振り向かなかったけど、

「……長い間、俺は妬んでいたんだ。全てにおいて強いアイツを。だが、やっと認める事が出来た。アイツが俺よりも優れている事を。だから……俺は王になるアイツを、傍で支えてやるつもりだ」

翠狼……。

翠狼はやっぱり、悪い人じゃなかった。

ちゃんと、他人を認めて潔い決断を出来る人なんだ。

それから、翠狼と先輩には……今でも絆がちゃんとあったんだ。

嬉しくて、しばらく翠狼の消えたドアを見つめていたけど、再び私はベッドに横になって眼を閉じた。

良かったって思いながら。
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