恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
●●●●●●

十日後。

「先輩、私ひとりで行くからいいよ」

今日は美術教室の日なんだ。

平静を装いながら私がそう言って先輩を見上げると、彼は訝しげに私を見下ろした。

「なんで」

なんでって、それはその……。

……今日、画を持って帰るんだよね。

あの、金賞を取った画。

「はっきり言え。なんでひとりで行くんだ」

先輩はそう言うと、唇を引き結んだ。

「それはその、夏休みの美術教室は、昼間だし、明るいし、翠狼はもう大丈夫だし、その」

長めの前髪から私を見つめる先輩の眼が、何だか鋭い。
< 283 / 305 >

この作品をシェア

pagetop