〜薄暗い日々〜短編 オムニバス
ある日、いつもの公園で娘を遊ばせていたところ、見慣れない子供が一緒に交ざって遊んでいる。

「どちらのお子さん?」

周囲のママ達も首を傾げるだけで、誰も知らなかった。

見慣れない子供は鼻水をススリながら、他の子供達と遊びに夢中だ。

娘よりちょっと下くらいの年齢だろうか。

男の子はいつ着替えたのかわからないような汚い服を着て、顔や手足は垢で真っ黒だ。

「嫌だわあの子…。」

親の心配をよそに娘はその汚い男の子と楽しそうに遊んでいる。

あまりにも娘に馴れ馴れしく遊ぶ為、汚い手足でばい菌でも移されたら堪らない。

娘の早紀を呼び、早々に引き上げる事にした。

娘は、まだ遊び足りないのか、何度も後ろを振り返った。

後には、恨めしげにこちらを見ている男の子だったが、すぐに他の子供との遊びに戻った。

しばらく、公園に行く度、その汚い男の子は来ていたが、ある日を境にぷっつりと来なくなった。

忍は来なくなった事には気にもしていなかったが、むしろ、汚い男の子が娘に近付かなくなった事に喜びを感じていた。

それに後からわかったママ仲間情報では、近所の安いアパートに住んでいる訳あり夫婦の子供だという事がわかった。

内縁の夫は暴力団らしく、常に周囲とのトラブルを起こしていた。

妻は派手な水商売風の女性である。

この二人の間に出来た子供が例の汚い男の子だ。

男の子を着たきりの不潔な状態からして、決して可愛がっている様子はない。

「働けるのに生活保護を受けてるらしいわよ。しかも母子家庭だから、パートで支えている家庭より優雅な生活なんだって。」

噂好きのママが話してくれた。

「役所も保護を打ち切ろうとした途端、旦那がねじり込んだらしいわよ。暴力団相手にどうしようもなかったみたい…。真面目に税金払うの馬鹿馬鹿しいわよね〜。」

その意見には賛同するが、たぶんオヒレがついているだろう話を半分に考えて間違いない。

現に、その日姿を見せないママ仲間の悪口を何度聞いている。

地元の幼稚園に入れない忍親子をなんと言っているか想像はつくものだ。

だからこそ、公園のママ仲間はその場限りの付き合いで充分だと、忍は思っている。
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