〜薄暗い日々〜短編 オムニバス
春を向かえ入園の季節になった。

早紀は有名幼稚園ではなく、お友達がたくさんいる幼稚園に入園した。

記念写真には父親と祖母との3人がニコやかに写った。

「早紀ちゃん、ごめんね。バアバで。ママ体早く治るといいねえ。」

早紀は笑いながら、首を振った。

「バアバ大好き!ママ嫌い!」

「あらあら、忍さんも嫌われたものだねえ。確かに美人だけど、冷たい人だったからねえ。どっかの馬鹿セガレは顔だけで選んでたからねえ。」

「おふくろ〜?!」
勘弁してくれとばかりに父親はタバコを吹かす。

早紀は実家の猫を撫でながら、つぶやく。

「ママ嫌い。すぐ鬼さんになる。鬼さんになってお友達を叩くから…。悟君を叩くから…。早紀と手繋いだだけなのに…。」

ギョッとして、祖母と父親は早紀を見る。

「ママに突き飛ばされて、頭痛いって。頭、大きな石にぶつかったんだって。我慢してたけど、悟君のパパに怒られて蹴飛ばされたら、もっと痛くなって動けなくなっちゃったんだって…。」


瞬間、早紀の隣に黒目のない小さな男の子がニヤリと笑ったのを親子は見たような気がした。

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