星月夜
これといったことはつぶやかない私のツイッターに、星月夜さんは何かしら関心を示してくれている。
だとしたら、 それでいいのではないか。
仕事が終わると、悟からLINEがきた。
《お疲れ様。今日は取引先の人と飲みだよ。そんなのより月海の手料理食べたい〜。》
《また今度ね。飲みがんばれ。》
料理はそこそこ出来る。それをおいしいと言い食べてくれる悟が愛しいと思う。
家までの道のりを、なんとなくゆっくり歩く。
ビルとビルの間を吹き抜ける風は人工的な匂いなのに、どこか春の香りがした。
建物に阻まれ、月の光が見えない。
大型電気店が通路に向けて設置しているテレビがエンタメニュースを流していた。
興味もなく素通りしようとすると、ニュースキャスターの明るい声が嬉しそうに告げた。
『世界で活躍している音楽家の斎賀秀星さんが入籍したと、先ほど情報が入りました!』
思わず足を止めてしまう。
『いやぁ、めでたいですねえ。斎賀さんと言えば幼少期からピアノの才能を高く評価され、16歳で世界に通用するピアニストと認められた青年ですよ』
『お相手の女性は同じピアニストのーー……』
そこから何も聞こえなくなった。