星月夜
追憶と誓い
後悔が肥大化したとでもいうような出来事が、今、この身に起きている。
信じられないけど、信じるしかなかった。
どういう理屈か知らないが、私の時間は高校1年の春まで巻き戻された。25年間の記憶はそのままにーー。
現実を受け入れるための時間がほしいのに、お母さんの声がそうさせてはくれなかった。
「早くしなさい、遅刻するわよ!」
「今行く!」
当時そうしていたみたいに、高校指定の制服を着て持ち物を整える。
自分が普段持ち歩いていた物をザッと見ると、当然あの頃持っていたものしかなかった。携帯電話もスマホじゃなくガラケー。
記憶と同じ、明るいお母さんと口数は少ないけど穏やかなお父さん。二人がいる朝食の席はとても安心できた。
あの頃は気付けなかったけど、二人と一緒に朝ご飯を食べるのは当たり前のことじゃなかったんだなと改めて思い知る。
お母さんが作ってくれた具だくさんのコンソメスープ。何年ぶりだろう。もう、飲める日は来ないと思ってた。
「うまいな、これ」
微笑しながら感想を言うお父さん。
「ホントだ、おいしー!」
明るく答え、涙が出そうになるのを必死に我慢した。