星月夜
「行ってらっしゃい」
「あのさ、お母さん」
「何?」
「今って好きな人いる?」
「突然どうしたの? 結婚してからずっとお父さんだけよ。当たり前でしょ? 月海、好きな人でもできた??」
「ううん、何でもない。行ってきます!」
「気をつけてね」
そうか。この時はまだ、お母さんも〝本当の〟家族なんだ。
もしこれが現実なら、本当に過去に戻れてるのだとしたら、壊さないようにがんばって守るんだ……!
そう。彼とのこともやり直せるーー!
斎賀秀星(さいが・しゅうせい)。彼は高校の同級生で3年間同じクラスだった、校内でもっとも仲のいい男友達。
私達は高校の音楽科に在籍していた。
普通科が5クラスある中、音楽科は1クラスしかない。それに音楽科の生徒は20人しかおらず他クラスに比べ人数が少なかった。だから自然と音楽科の生徒同士はみんな仲良くなった。
音楽科には女子が多かったけど、三人だけ男子がいた。そのうちの一人が秀星だった。