星月夜
中学の頃までは学年一ピアノがうまく音楽の成績も良かったけど、高校ではそうはいかなかった。同じように音楽を極めた才能高い人達がたくさんいた。
負けられない。毎日必死だった。表面的には仲良く接しつつ心の中ではライバル視していた。将来敵になる人達かもしれない。
音楽科に入ってからしばらくすると、秀星と私は群を抜いてすごいと評価された。実技テストも文句なしの出来とのこと。努力が生かされているのを実感し涙が出そうなほど嬉しかった。
秀星と違い私は天才ではない。気を抜けばすぐ誰かに抜かされてしまう凡人だ。自覚していたので、もてはやされることに抵抗があった。
そのうち私達は二人そろって音楽科のトップツーと呼ばれるようになり、学校見学に来た中学生達に披露するピアノ演奏なども任されたりした。
だからというわけではないだろうけど、同じような立場で一緒にいる時間も多い秀星とはとても気が合った。
音楽科の中で一番仲の良い男友達。他の人には話せないささいな悩みなども含め、彼には何でも話していた。レッスン中に注意された時のこと、ピアノの練習方法の相談。
音楽のこと以外にも色々話した。彼も色んな話をしてくれた。
楽しくて心地のいいその関係は、私をどんどんダメにした。彼に甘え過ぎてしまったんだ。