星月夜

 あれは完全な八つ当たり。あんなことをしたって音大へ行けるわけではないのに。

 そう気付いた頃にはもう、目に見えて私達の間に距離ができていた。

 受験に向けて気を抜かない秀星。一方、私はなまけるようになった。どうせがんばっても無意味だし、授業もいい加減な気持ちで受けた。ピアノの練習も全然しなくなった。

 ピアノの腕は1日サボれば1週間分遅れると言われている。技術を向上させるのにはものすごく時間がかかるのに堕落するのは簡単だった。

 美羽や知輝にも心配されたけど、秀星との間に起きたことは何も話さなかった。

「やっぱり音大は行かない。ピアノ興味なくなってさ」

 それだけ、笑顔で言った。


 ーーーーごめんね。

 何度も謝るチャンスを探し、その機会は何度も訪れた。同じクラスの同じ科だし秀星とは席も近い。

 けれど、謝れなかった。彼の姿を見るたび、拒絶される不安が大きくなっていった。あんなことを言った私となんてもう話したくないかもしれない。

 謝れないまま高校を卒業することになってしまったーー。

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