星月夜
許してもらえなくても、一言謝るべきだった。卒業後何度も後悔した。
後悔先に立たず。
秀星とは完全に縁が切れてしまった。大学に入ってからケータイの番号やメアドも変えたらしい。
22歳の時、高校の同窓会があった。秀星に会いたくて参加したけど、彼は来なかった。知輝の話によると、秀星は海外の演奏会に出ているとのこと。想像以上に忙しい身だった。
フェイスブックやツイッター等、旧友を探す手段となりうるSNSもやっていないようで、どれだけ検索しても秀星個人とつながるツールはヒットしなかった。代わりに、ピアニストとして活躍する彼の情報が日増しにネット上に増えていった。
再び彼とのつながりを持つことは諦めるしかない。ピアニストになることを諦めた時のように……。
そう思っていたのに、こうして過去に戻れた。それも、秀星と友達になる前に。
これは千載一遇のチャンスなのではないだろうか!?
何がどうしてそうなったか気になることも山積みだけど、今は脇に置いておこう。
もう、あの失敗を二度と繰り返さない。
大切だった秀星とのつながりを失わないよう、やり直してみせるんだーー!!
これが私の生きた人生の過去だというのなら、この先降りかかる不幸な出来事も変わらないだろう。お父さんのリストラもお母さんの家出も、必ず訪れる未来。
だけど悲しむのはまだ早い。何が起きても自分の行動だけは変えられるはずだから。