星月夜
星が無数に見えるだけの暗い天井。私にはどれがどれなのかさっぱり分からなかったけど、秀星はひとつひとつを見てその名前を口にした。
「あれがアンドロメダ座」
「あの短い棒みたいなのは?」
「らしんばん座。それよりちょっと長めのカクカクしたやつがちょうこくぐ座」
羅針盤? 彫刻具? 何それ、星座!? マニアックすぎる。当時と同じことを思った。
「星座って、山羊座とか水瓶座とか、動物や物のイメージしかなかったよ」
「だろ? じっくり見ると面白いよ、夜空って」
得意げに、そして興味津々な目で、秀星は語った。
「人の世界と同じだよな。空にも色んな星が存在してて、お互いを見守り合ってる」
「……深いね」
そんな気持ちで夜空を見たこと、今までなかった。
見慣れたはずのプラネタリウム。夜の星々も、隣に秀星がいるというだけで別世界のように感じられる。
不思議。飽き飽きしていたはずなのにまだ見ていたいという気になる。
星座なんてまるで興味がないけど、秀星の口から聞かされる言葉をもっと聞いていたいと思ってしまう。
そうだ。この時から私は空を見上げるのがクセになったんだった。
特に、静かな夜に星々を眺めるのが好きだ。独り占めしたいくらい綺麗だから。