星月夜
「……だよな。俺もそうした方がいいと思う」
「ごめんね。ここまで付き合ってくれたのに……」
「気にするなって」
行きより口数少なく、私達は駅を目指した。
もう、空は真っ暗になっている。
知輝の忠告は正しかったのかもしれない。人の人生を勝手に変えることなんて、誰にもできないのかもしれない。
駅のホームに着くと、誰もいなかった。それがよけい、しんみりした空気を強調する。
このまま美羽のことを放置するしかないなんて、何て無力なんだろう。
大人になったまま過去に戻れば何もかもうまくいくと思っていたけど、そんな都合のいいものではないらしい。
「中旬頃には春の大三角形が見れるんだけどな。残念!」
空を見上げて秀星が言った。心なしか、普段より元気な声で。
「春の大三角…?」
「うしかい座としし座、乙女座が重なってできるんだ。アルクトゥルス、デネボラ、スピカを結んで三角になる」
「へえ、そうなんだ」
昔学校で習った気がするけど、天体系の勉強は苦手だったからあまり記憶にない。音楽のことだけじゃなく星も好きな秀星。
今、彼がそばにいてくれてよかった。
「綺麗だね」
「うん。プラネタリウムもいいけど、やっぱり本物の星空には敵わないよな」
励ましてくれているのが分かる。綺麗な星を見ていると、落ち込んでいた気持ちは少しだけ楽になった。