星月夜
先のことを考え沈んでいく私の気持ちとは反対に、美羽の声は意外なほど明るかった。
「どうして月海が謝るの?」
「……だって」
「悪いのは彼氏じゃん。アタシがいながら他の女に目移りするなんて、目ェ腐ってるんじゃない?」
「……美羽…?」
おそるおそる美羽の顔を見ると、サッパリと明るい顔をしていた。信じられなかった。落ち込んで、ない……?
「秀星に聞いたよ。月海、彼氏の学校までわざんざ行ってくれたんだって?」
「ごめん、勝手なことしたよね……。行っただけで、結局話はできなかった……」
「それも聞いた。秀星が全部教えてくれたよ。だから振られる覚悟もできてたっていうか」
わざとっぽくため息をつき、美羽は得意げに言った。
「同じ部活の女と浮気してたんだよね、彼氏。浮気っていうかこの場合は本気か……。聞かされた時はショックで、自分の目で見なきゃ信じられない! って思ったりもしたけど……」
「無理してない?」
「悲しいは悲しいけど、寝て起きたら治ってた。秀星と月海がわざわざそういう行動起こしてくれたのが嬉しかったから、彼氏のことそれほど考えずに済んだ」
別れるまで、美羽は毎朝毎晩彼氏のことばかり考えて不安定な気分だったらしい。でも、秀星から本当のことを聞かされ別れる覚悟をしてからは悩む時間が減ったそうだ。