星月夜
冷たい返事をし、お金を受け取る。
あーあ。お母さんが出て行ってから家の中はクソ重い空気で充満している。窒息しそう。
特に行きたい場所もないけど、外に出ようとする。
「あったかい格好で出かけるんだぞ」
「うるさい。ほっとけ」
気遣うお父さんに、ありがとうだなんて言う気持ちにはなれなかった。
会社が倒産する前まではもっとビシッとしてかっこよかったはずなのに、今は何だろう。弱々しくて情けない父親。
母親に捨てられたことで増幅したやり場のない苛立ちと悲しさを、お父さんに冷たく当たることでごまかしていた。
全てを環境のせいにしていた。
弱くて愚かだった。私はーー。
ーーーー。
ーー…………。
25歳を前にすると、チャラチャラしていた周りの友達や知り合いもしっかりしてくるようになった。
結婚する女友達や仕事で活躍する男友達を見て、私もしっかりしないと! と、焦った。
それまでは若さゆえに許されていたかもしれないけど、大人になっていくみんなはいずれニートな私を軽蔑する。そんな予感がした。
そうして現在、なんとか平均的な25歳になることができ、なんとなく生きている。
お父さんとの溝はそのままだし、色々悲しいこともあったけど、今はそれなりに幸せだ。
高校時代からの友達とはいまだに仲が良くしょっちゅう会っているし、結婚を視野に入れた彼氏もいる。