星月夜
「恋は無くしたけど、私には友達がいるんだなって思えた」
「……美羽」
「あんなヤツ、アタシにはふさわしくない。コレ、秀星が言ってくれたことなんだけどね、今はホントにそう思えてきたんだ」
「秀星がそんなことを……」
以前の秀星はそこまで人に深入りするタイプじゃなかった。人当たりはいいけどそれだけって感じで。
「嫌なことは忘れて、他にいい人見つけることにした!」
そう言い笑う美羽の表情は、恋愛中とはまた別の輝きがあった。
「おはよー」
そこへ登校してきたばかりの知輝がやってきた。続いて秀星も教室に入ってくる。
美羽はさっそく知輝にこんなことを言った。
「ねえ、ヴェートーベンの友達誰か紹介してよ〜。優しくてかっこいい人!」
「曖昧な注文だね。どんな行為を優しさと取るかは人それぞれだし、かっこよさの概念もそうでしょ。具体的に条件挙げてくれないと紹介しようがない。ちなみに、俺友達少ないから必ずしも美羽の希望するタイプ紹介できないかも。期待しないでね」
「やっぱりいい。ヴェートーベン通すのめんどくさい。他の人に頼む」
「うん、それを勧めるよ」
知輝は平常運転だ。私の秘密はバラしてないっぽい。バラされたところで誰も信じないだろうけど。それに、美羽の失恋を深く気に留めない知輝の言動にもホッとした。