星月夜
「ねえ、ヴェートーベンって昔からそういう風なの? そんなんで彼女できるの?」
「まあ、それなりにモテたよ。顔いいしピアノ上手いから。付き合いは1週間と続かないけど」
「それ、分かる」
いつものように雑談している二人を横目に、私は秀星に話しかけた。
「ありがとう。美羽のこと励ましてくれたんだよね。言いにくいことも全部話してくれたんだって?」
「月海からは話しづらいだろ? それに、俺も一度は首突っ込んだ問題だし、そのまま見て見ぬフリも後味悪い」
「ありがとね。美羽、もっと落ち込むと思ってたから安心した。秀星のおかげだよ」
「月海のおかげだろ。俺は何もしてない」
「そんなことないよ。秀星がいてくれたから……!」
きっと一人じゃ美羽の彼氏の学校へ行けなかった。
クスッと小さく笑い、秀星は優しくこっちを見つめた。
「月海っていい人だな」
「そんなことないよ」
未来を知ってるから選択の数を増やせるだけ。
「俺はそう思うよ。月海の存在が美羽を立ち直らせた。本来失恋ってもっとつらいものだと思うけど、あそこまで復活早いのは月海のおかげとしか」
明るい顔で知輝と話している美羽を見て、秀星は安堵していた。
秀星はそう言ってくれるけど、秀星がいたから私は行動を起こせた。一人では何もできなかった。