星月夜
ムーンストーンがはめられた指輪。お母さんが宝物にしていた物で、それは高校生のこの時点ではお母さんが管理している。
というより、私も正式にお母さんからもらったわけではなかった。出ていったお母さんの部屋にあった指輪を勝手にはめていただけだから。
考え込む私の隣で、知輝も思案顔をした。
「でもまた、何で指輪なんだろうね。月海のお母さんって異世界人か何かなの?」
「いや、そんな話聞いたことないよ。普通の人間だと思う」
「本当に? そんな指輪持ってるのに?」
知輝が疑問に思うのも当然だ。私もそうかもと思ってしまう。
家に帰ったらお母さんに指輪のことを訊いてみよう!!
早く家に帰ってお母さんに指輪のことを尋ねたいけど、秀星とした放課後の約束も大事だ。断りたくない。
焦りと楽しみ。複雑な気持ちで放課後を迎えた。
美羽や知輝はマンションでのレッスンがあるので、終業のチャイムが鳴ってすぐ二人は学校を出た。
「月海、行こっか」
「うん」
人もまばらになる頃、秀星が私の席まで来た。一緒に教室を出て、約束通り音楽棟へ向かう。
「レッスン室、他にも人いるかな?」
「……うん」
「秀星?」