星月夜
「え!? でも……」
「大丈夫。おごるし。好きなだけグチりなよ」
「いえ、自分で払います! って、そうじゃなくて、飲むのはちょっと……」
昼間の食事ならともかく、それって何だか特別な感じがする。デートみたい。
悟に対して仕事関係の人という気持ちしかなかったので、二人きりで飲みに行くのは抵抗があった。夜だし。
「安心して? こう見えて紳士だから」
「いえ、そこは別に疑ってないんですが……」
好きでもない人と飲みになんか行っていいのだろうか?
高校の頃の恋を忘れ切れていないせいで、よけいためらった。
もう大人。経験はなくても、男女が一緒に酒を飲んだらどういう展開になるかだいたい想像がつく。
悟はクスッとイタズラな笑みを見せ、私の頭を優しく撫でた。
「じゃあ、正直に言うわ」
「はい……?」
「月海ちゃんのことが好きです」
「え……!?」
「紳士ぶってるけど下心全開です」
「ええ!?」
「俺のこと好きになってほしい。その機会ちょうだいよ。今夜が嫌だったらもう二度と誘わないって約束するから」
愛しげな瞳で言われ、ドキッとした。
「まさか、そんな……。冗談ですよね? 大塚さんって誰にでも優しいですし」
突然の告白に驚き、思ったことを言ってしまう。
本当にそう。大塚悟という人は誰にでも気さくで明るく話しかける。そういう人だから新入社員の私にも親切に声をかけてくれるんだとばかり思っていた。