星月夜
実際、うちの会社の女性陣からも人気がある。かっこよくてフレンドリー、理想的な男! って。
仕事で苛立っていたせいか、悟に告白されたことで優越感を覚えた。今日理不尽に責めてきた先輩も大塚さんに憧れている。
ざまあみろと思った。私はアンタ達とは違う。この人に選んでもらえる価値があるんだ、と。
「気持ちに応えられる自信はないですけど、飲むだけなら」
「ありがとう! やったぁ!」
本当に嬉しそうに、大塚さんは笑った。
「月海ちゃんの好きなところ行くよ。どこにする? どこでも行くよっ」
恋愛する気で誘いに乗ったわけじゃないのに、そこまで喜ぶ?
不純な私の本音に気付かない大塚さんは、なんて純粋なんだろう。その素直さが胸に痛い。
それ以来、悟は何かと私をご飯に誘ってきて、仕事の悩みやグチを聞いてくれた。悟も悟で、仕事でのことを色々面白おかしく話してきた。
会社での精神疲労もきれいさっぱり消える、楽しい時間だった。
そうしているうちに、この人と恋をしてみるのもアリかもしれないと思うようになった。
それに、全て忘れたかった。
高校の頃にやり残したことや自分の努力不足。過ぎ去った時間の重み。大好きだった憧れの人ーー。
年々重さを増し心を潰しそうになるそれらを、そろそろ手放したかった。
そうして、数回の食事の後、悟と付き合うことにした。今から半年前のことである。