御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
たくましい腕に抱かれ、美月はそのまま体を預ける。
こんなふうに静かな夜を故郷で迎えられたのは、彼のおかげだ。
「あの……雪成さん」
「ん?」
「いろいろ、ありがとうございました。私、東京に戻ったらお仕事頑張りますから。もちろん仕事は頑張って当然なので、ご恩返しにはならないかもしれませんけど……」
自分にできることはそのくらいだから……。
美月は雪成を見上げた。
(きっと雪成さんは、いつものように私のほっぺたをプニプニして『よろしく頼む』と言ってくれるだろう。)
だが雪成から返ってきたのは、美月の想像もしていない言葉だった。
「俺はもう、お前を秘書として使うつもりはない」
「……え?」
「辞めてもらう」
こわばる美月の肩に置かれた、雪成の手に、力がこもる。