御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
けれど美月は、それを口に出すことをためらってしまった。
(滉一君にフラれて、ようやく立ち直れそうだと思ったのに。今また居場所を失ったら、私はどうやって立ち直ったらいいの……。)
「あの、せめて、秘書は、続けさせて……ください……」
「……美月」
「お願い、不安なんです……」
雪成の首を腕を回し、しがみつきながら美月は懇願していた。
「わかった。俺にはお前だけだが……不安だと言うなら、側で見ていればいい」
雪成はクスリと笑って、駄々っ子のようにしがみつく美月の頬にキスをする。
美月が感じている不安を、自身の気持ちを疑うものだと感じた雪成は、美月の「秘書でいたい」という提案を受け入れたようだ。
(それだけじゃない……それだけじゃないけど……。)
だけどどうしたらいいかなんて、今すぐ最適な答えが出せるはずもない。
ただ一時の夢と割り切って夜を過ごすだけなら、こんな気持ちにはならなかったはずなのにーー。
うまく息ができない。
溺れる魚のような気分になる。
雪成から繰り返し与えられる口づけを、美月は無我夢中で受け止めるしかなかった。