御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
菜穂は左腕につけたバングルを撫でて、それから雪成の顔を下から覗き込む。
「ユキ、ちょっと二人で話そうよ」
「なんでだ。ここでいいだろ」
雪成は首を振る。
「えー、相変わらずつめたいなー」
だが菜穂はとくにめげた様子もなくクスクス笑って、雪成の腕を取り、甘えるようにくっついた。
「言うこと聞かないと、秘書さんにあることないこと言っちゃうよ」
(あることないこと? というか、くっついた……!)
心臓が跳ね上がるが、雪成は面倒くさそうにため息をつき、
「ったく……すぐ戻るから」
と、言い、二階への階段へと向かった。
「くっつくな。暑い」
「ケチー」
(仲、いいんだ……。)
腕にしがみつく菜穂を押し返す雪成たちの背中を見て、美月は不思議な感覚に襲われた。