御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 菜穂は左腕につけたバングルを撫でて、それから雪成の顔を下から覗き込む。


「ユキ、ちょっと二人で話そうよ」
「なんでだ。ここでいいだろ」


 雪成は首を振る。


「えー、相変わらずつめたいなー」


 だが菜穂はとくにめげた様子もなくクスクス笑って、雪成の腕を取り、甘えるようにくっついた。


「言うこと聞かないと、秘書さんにあることないこと言っちゃうよ」


(あることないこと? というか、くっついた……!)


 心臓が跳ね上がるが、雪成は面倒くさそうにため息をつき、
「ったく……すぐ戻るから」
と、言い、二階への階段へと向かった。


「くっつくな。暑い」
「ケチー」


(仲、いいんだ……。)


 腕にしがみつく菜穂を押し返す雪成たちの背中を見て、美月は不思議な感覚に襲われた。


< 138 / 323 >

この作品をシェア

pagetop