御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

「……何も言わずに、ついて来てくれって」
「そっか。だったら俺がなにか言わないほうがいいかもしれないね」


 そう言うハジメの顔はどこか神妙で、
「元カノ……なんですか」
つい美月は、思ったことをそのまま言い切ってしまった。


「もうっ、みっちゃん! 勘のいい子は嫌いだよっ!」


 ハジメは両手で顔を覆い、ワザとらしく「うわーん」と嘆きながらも、美月が何も言わないのを横目で確認して、ハァとため息をついた。


「まぁ、そういうこと……。学生の頃から長く付き合ってて、双方の親も婚約者扱いしてて、でも三年前に破局して、それっきり……みたいな感じ」
「そうなんですね」
「え、ちょ、みっちゃん真顔……怖いんですけど」
「そんなことないですよ」


 そうは言いながら、顔が引きつっているのが自分でもわかる。
 頰のあたりがピリピリして、笑わなきゃと意識すると、息をするのを忘れてしまう。


< 140 / 323 >

この作品をシェア

pagetop