御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 美月は持っていたシャンパングラスの中身をあおるように飲み干し、グラスをギュッと握った。


「どうして二人は別れたんですか?」


 ハジメなら知っているに違いないと、美月は改めてハジメを見上げ問いかける。


「えっ、そこまで聞いちゃう?」
「雪成さんは教えてくれないだろうし、聞いていたほうが、私は心構えもできて、ラクです」
「ええ〜……なんの心構えなんだよ……」


 ハジメはくしゃくしゃと髪をかき回した後、
「うーん……まぁ、俺が菜穂から聞いたのは、“大企業の奧さんなんかつまらない。ニューヨークでジュエリーデザイナーとして成功したい”だったけど……」
と、小声でささやいた。


 自分で聞いておいて、美月は胸のあたりをハンマーで撃ち抜かれたような衝撃を受けた。


(長く付き合った恋人との安定した未来よりも、自分の夢を選んだってこと……? すごい。私はずっと、好きな人とあったかい家庭を作りたいとしか考えなかったのに……。菜穂さんは、完璧に自立した女性なんだ……。)



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