御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
美月は置いたグラスを持ち上げてシャンパンを注いでもらう。
半ば、飲まずにやってられるかという投げやりな気持ちもあったのかもしれない。
すぐにそのグラスを空けてしまった。
「ちょっ、そんなに飲んで大丈夫? リョウ〜なにしてんの」
「ハジメ、そんな怖い顔するなって。わかってるよ。彼女は雪成のツレなんだろ。ただ話し相手になるだけだ。ほら、ハジメ、あっちで呼ばれてるぞ〜」
男は快活に笑って、渋い顔をしたハジメの背中を追いやった。
「座ろうか。立ってるとすぐに酔いがまわる」
「はい」
船内は広く、ソファーはゆったりと座ることができる。
並んで腰を下ろすと、男は名刺を差し出した。
「工藤良輔(くどうりょうすけ)といいます。よろしく」
名刺には、誰でも知っている大手アパレルメーカーの社名が書いてあり、なおかつ肩書きには常務とあった。