御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
美月という名前をつけてくれたのは、死んだ祖父である。
似合う似合わないは置いておいても、名前を褒められるのは嬉しかった。
それから美月は良輔に少しだけ打ち解けて、色々な話をした。
美月が今読んでいる推理小説の話をすると、同じ作家のファンだということがわかり、話がはずんだ。
「あんまりにも好きになりすぎると、もうその人が書いてるものならなんでも読みたいって気にならない?」
「なります。小説家指南本まで買っちゃって……書きもしないのに、勉強になるなって思ったりして」
「あー、それ俺も持ってるわ。“国語は苦手、小説を書くのは好きじゃない”って言い切るのもビックリだし、常にビジネスの観点から書いてるの、面白いね。うち、全然関係ないアパレルなのに、やっぱり勉強になるなって思った……。もちろん俺に推理小説を書く予定はないんだけどな。フフッ……」
「ですよね」
そして美月と良輔は肩を揺らして笑いあう。
お互いの言いたいことがわかると、それだけで楽しいものだ。
「美月さんの出身は?」
「四国です。徳島県の北東の端っこ……鳴門市です」
「えっ、鳴門? うちの母も鳴門の出身」
そして美月の通った高校の名前を口にする。