御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「ふふっ……」
良輔のおどけた言葉に、美月は笑う。
確かに山邑始という男は、最初から最後まで、顔を合わせれば口説いてくる男である。
「だけど山邑さんのあれは、本気に取らない相手を選んでますよね」
声をかける女性全てを本気にさせてしまっては、ハジメの身が持たないだろう。
だからあれはハジメのお遊びとしか、美月は考えていなかった。
「まぁ、確かにそういうところはあるかもな。学生の頃から博愛主義で、あちこちで甘い言葉をささやいてモテモテだったけど、それでもめた記憶はないし……」
それもそうだとうなずきながら、良輔は組んでいた足を下ろして立ち上がった。
「いい景色になってきたみたいだ。デッキに出て風に当たらないか」
「いいですよ」
美月がうなずくと同時に、
「じゃあ行こう」
と、手を掴まれる。
「えっ、あのーー」
気がつけばそのまま強引に、クルーザーのデッキへと連れ出されてしまった。