御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
押し込めていた気持ちを真正面から問いかけられて、暴かれる。
今更すぎるその考えは、美月を怯えさせた。
(ダメ、こんな気持ちに向き合いたくない。いつか終わりが来る恋を、始めたくない……!)
その瞬間、風が強く吹いた。
美月のかぶっていた帽子が舞い上がる。
「あっ……」
太陽に目を細めながら空を見上げ、美月はその視線の先にあるものを見て、凍りついた。
「帽子が……あ」
美月の帽子を追いかけようとして、良輔も固まった。
二人の視線の先にはーー。
二階のデッキの端に、雪成と、彼の首の後ろに腕を回し口付ける菜穂の姿があったのだ。
(うそ……。)
そのまま二人はもつれるように抱き合ったまま、視界から消えてしまった。