御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

「大丈夫です……。雪成さんを責めたりなんかしません。誰かを責めるとしたら、それは私……だと思います……」


 美月は良輔を押し返して、一階の船室の方向へと戻る。


「は? それどういう……って、ちょっ、美月さん、待って……」


 良輔が慌てて後を追いかけてきたが「一人でいたいので」と断って、反対側の通路に出る。


(頭、パンクしそう……。)


 手すりを両手で掴んで、美月はその場にしゃがみ込んだ。


 美月の脳裏には、キスをする二人がくっきりと焼きついていた。

 大企業の副社長と、自立したニューヨーク在住のジュエリーデザイナー。しかも学生時代からの恋人ときてる。


(だけどこれが現実なんだ。私が弱いから……他人の好意に甘えて自分で立ち直ることを放棄したから、こういうことになるんだ。)


 だから責められるとしたら“弱い自分”なのだ。


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