御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 美月の目からポタポタと涙が床に落ち、ウッド調の甲板に涙の跡で模様を作る。


(ここが陸の上ならどこにだって逃げられるのに、海の上だと逃げられない……。)


 このあとどうやって雪成と菜穂の姿を見つめればいいのか。
 それともここにずっと隠れていようか……。


 そんなことを考えてグルグル思考を巡らせていると、頭上からゴロゴロと地響きのような音が聞こえた。


「え?」


 泣きながら顔を上げると、ついさっきまで真っ青だった空が、灰色の分厚い雲に覆われていた。

 そして大粒の雨がいきなりザーッと降り始め、空を見上げた美月の頬に落ちる。

 いきなりの雨に、美月の涙も、あっという間に流されてしまった。


「雨降るなんて言ってなかったのにー!」


 ハジメの声だ。


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