御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 甲板の向こうから「キャー」と雨に悲鳴をあげ、バタバタと移動する音も聞こえる。

 それから、
「……美月! どこだ!」
 低くてよく響く声が、美月の名を呼んだ。


 ハッとして立ち上がると、
「美月!」
 美月の姿を発見した雪成が慌てた様子で走ってくる。


「早く中に入れ!」


 そして美月の体を抱き寄せ、そのまま一階のリビングへと駆け込んだ。


「はい、濡れた人は体拭いて〜!」


 中ではハジメがてきぱきとタオルを配っており、それを一枚受け取った雪成は、美月の肩や腕を拭き始める。


「あ、あの、自分で拭けますから。雪成さんも拭いてください……」


 子供のように体を拭かれるのを恥ずかしいと思うよりも先に、濡れたままの雪成が気になって、美月は体を引こうとした。

 だが雪成は美月の腕を掴んだまま離さない。


「俺は丈夫だからいいんだ」


< 156 / 323 >

この作品をシェア

pagetop