御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
甲板の向こうから「キャー」と雨に悲鳴をあげ、バタバタと移動する音も聞こえる。
それから、
「……美月! どこだ!」
低くてよく響く声が、美月の名を呼んだ。
ハッとして立ち上がると、
「美月!」
美月の姿を発見した雪成が慌てた様子で走ってくる。
「早く中に入れ!」
そして美月の体を抱き寄せ、そのまま一階のリビングへと駆け込んだ。
「はい、濡れた人は体拭いて〜!」
中ではハジメがてきぱきとタオルを配っており、それを一枚受け取った雪成は、美月の肩や腕を拭き始める。
「あ、あの、自分で拭けますから。雪成さんも拭いてください……」
子供のように体を拭かれるのを恥ずかしいと思うよりも先に、濡れたままの雪成が気になって、美月は体を引こうとした。
だが雪成は美月の腕を掴んだまま離さない。
「俺は丈夫だからいいんだ」